しかし、ドラマは激動の展開を迎える。大相撲界を大きく揺るがした一連の騒動の果てに、貴乃花親方は日本相撲協会を退職。それに伴い貴乃花部屋も閉鎖へと追い込まれた。2018年秋、田川の宿舎撤去作業が行われた際、現地には静かな涙が流れていた。
「相撲協会との関係が取り沙汰され、世間がかまびすしく報じる中、田川の人々だけは変わらず親方を温かく迎え入れた」と地元の後援会メンバーは明かす。部屋がなくなっても、田川市との絆が途切れることはなかった。看板は下ろされても、一度育まれた人間関係の根は深く、土壌の中に息づいていたのである。協会という巨大な組織の枠組みを超えた場所で、元横綱と一地方都市の結びつきは、むしろより純粋な形へと昇華していった。