京都の建長寺や清水寺、奈良の東大寺。日本を代表する名刹の境内で、巨大な紙に向かい一気に筆を走らせる彼女の姿を覚えている人は多いだろう。腕全体、いや全身の体重を乗せて振り下ろされる大筆。吐き出される墨線は、豪快でありながら、どこか包み込むような温もりを湛えている。
2005年の初個展から20年を経た今、彼女の揮毫は単なる「話題のパフォーマンス」の域を完全に脱している。2020年東京五輪の公式アートポスター制作やNHK大河ドラマの題字など、数々の歴史的プロジェクトを果たしてきた足跡。しかし、本人は驚くほど無欲だ。評価や名声に一切惑わされることなく、今も変わらず白い紙と墨に真摯に向き合い続けている。