私たちが日常的に使うスチールやグラスファイバー製の洋傘と、竹と紙で仕立てられる伝統の傘との間には、根本的な設計思想の違いが存在する。洋傘は「生地を引張って張る」構造であるのに対し、伝統の傘は「竹骨の弾力を利用して外圧を包み込む」構造を持つ。そのため、開閉時の滑らかな手応えや、雨粒が和紙を叩く太鼓のような静かな音色は、洋傘では決して再現できない。
元禄三年(1690年)創業という日本最古の傘店である株式会社辻倉の職人は、一本の傘に一本の竹を細かく割った骨を使用し、閉じた際にはすべての骨が元の一本の竹の形に戻るよう精緻に仕立て上げると解説する。一方で、伝統の技を守りつつ照明ブランドの立ち上げなど海外市場を開拓してきた西堀耕太郎氏は、構造の強さだけでなく「光を透かすメディア」としての価値を強調する。太陽光や街灯の光を通したとき、和紙特有の温かみある陰影が広がる点こそ、完全遮光の人工繊維で作られた洋傘にはない最大の魅力なのだ。