ならまちの食卓を語る上で外せないのが、古くから東大寺の僧侶たちに食されてきた「奈良茶飯」だ。番茶やほうじ茶で炊き上げた米に炒った大豆を混ぜ込んだ一杯は、素朴でありながら噛み締めるほどに香ばしい滋味が広がる。この伝統食を現代のランチ御膳へと見事に昇華させた名店が路地奥に佇む。
主役を支えるのは、地元契約農家から毎朝届く朝採れの「大和野菜」たち。軟らかな葉肉と独特の風味を持つ大和まな、みずみずしい大和きゅうり、そして濃厚な甘みを蓄えた大和芋。天ぷらやおひたし、白和えといった滋味あふれる小鉢が並ぶお膳は、身体の隅々まで染み渡るような優しさに満ちている。
派手さはない。だが、ひと口ごとに土地の物語が立ち現れる。奈良の風土を最もピュアに体感できる贅沢な時間だ。