なぜ切り方ひとつで味がここまで劇的に変わるのか。鍵を握るのは、玉ねぎ特有の辛味成分である硫化アリルだ。包丁を入れる際、細胞が破壊されることで硫化アリルが生成され、これが生の時の刺激臭や辛味の元となる。しかし、適切な加熱によってこの成分は分解・変化し、玉ねぎ本来の糖度を引き立てるシロップのような甘みへと昇華する。
料理研究家によると、繊維を断ち切るように横方向にカットすると熱が芯まで素早く通り、硫化アリルの揮発と糖化が短時間で進むという。逆に繊維に沿って縦に切るとシャキシャキした食感が残り、脂っこいカルビやハラミと一緒に食べる際の口直しに最適な仕上がりとなる。目的に応じて包丁の向きを変えることこそ、旨味を極限まで高める秘訣なのだ。