沖縄県・与那国島で行われた長期ロケは、想像を絶する過酷さだった。天候の急変、容赦ない直射日光、強い潮風。医療ドラマとしてのリアリティを追求するあまり、手術シーンの撮影は数日間に及ぶことも珍しくなかった。血圧計の巻き方ひとつ、メスの角度ひとつに至るまで、徹底的なリアリズムが求められたのだ。
当時を振り返る関係者の証言によれば、吉岡秀隆は現場で常に「コトー先生」であり続けようと自らを追い込んでいたという。本物の医師として島民と接するようにエキストラや現地住民と語らい、その重圧を受け止めていた。そんな張り詰めた吉岡を、柴咲コウの明るさと飾らないプロ意識が精神的に支えていたことは現場でも語り草になっている。
予定調和を嫌う現場だからこそ生まれた奇跡的なカットの数々。台本にない細かな沈黙や視線の交差が、そのまま作品の情感へと昇華されていった。