守綱の生涯を語る上で欠かせないのが、妻・黒柳朝との運命的な出会いと固い絆だ。何事にも囚われない自由な精神を持った朝との結婚生活は、芸術家同士の情熱に満ちたものだった。しかし、二人の幸せな日々に忍び寄ったのは太平洋戦争の激化という残酷な現実であった。
徴兵され、戦火の中に投じられた守綱を待ち受けていたのは、終戦後のシベリア抑留という凄惨な運命だった。過酷な強制労働と極寒の環境下で多くの人々が命を落とす中、彼は仲間たちを励ますために現地で手に入れた楽器を手に取り、暗闇の収容所に音楽を響かせたという。命の危機に瀕しながらもヴァイオリンの手放さなかった彼の強靭な精神力は、絶望の淵にいた多くの同胞に希望の光を灯し続けた。