白の絵の具が手元にない場合、あるいはあえて白を使わずに強烈な光を表現したい場合、プロの画家たちは視覚的錯覚と対比の技法を駆使する。
最も基本的なアプローチは、基底材(紙やキャンバス)の白さを残す「塗り残し」の表現だ。しかしそれ以上に高度なのが、周囲の明度を極限まで下げることで中間の明るさの色を「白」として見せる明暗の対比技法である。名画『真珠の耳飾りの少女』を観察してみよう。少女が身につけた真珠の輝きは、実はベタ塗りの白ではない。暗い背景と周囲の反射光、そして絶妙な灰色や薄い青のタッチが組み合わされることで、観客の脳内で強烈な白色光線へと変換されているのだ。
パレット上で白に近い代替色を作るなら、アンバーやウルトラマリンを微量の黄土色と極小量の水で極限まで希薄化させ、基底材の白を透けさせるハイライト技法が効果を発揮する。