駅から歩いてすぐの場所に広がる函館朝市は、相変わらず威勢のいい掛け声と活気で満ちあふれている。生簀で泳ぐ透き通ったイカをその場で捌く名物の活イカ釣りには長い列ができ、丼横丁からは炊きたての米と海鮮の芳醇な香りが漂う。だが、感度の高い旅人たちの視線は今、メインストリートから一本外れた大門地区の路地裏へと注がれている。
観光客向けの派手な看板を掲げず、ひっそりと暖簾を守る小料理屋や居酒屋の昼営業。そこにこそ、目利きの地元漁業関係者が足繁く通う「真の海鮮丼」が潜んでいる。早朝の競りで仕入れられた極上の生ウニや、熟成によって旨味を極限まで引き出した本マグロ。余計な装飾を削ぎ落とし、圧倒的な鮮度と職人技だけで勝負する一杯は、一度口にすれば記憶に焼き付いて離れない。朝市で活気を味わった後は、裏通りの静寂の中で極上の海の幸と向き合う。これこそが、いま最も通好みな食の歩き方だ。