長年にわたり読者の間で憶測を呼んできた「休載理由の真相」ですが、その根底にあるのは極めて過酷な肉体的制約です。画業35周年を記念して開催された『冨樫義博展 -PUZZLE-』の公式図録において、冨樫氏は直筆メッセージを通じ、椅子に座って原稿を描くことすら不可能な凄惨な闘病生活を告白しました。
「あらゆる姿勢が痛くて、2年ほど椅子に座れない状態で描いていました。背もたれにクッションを挟み、寝そべったような姿勢でしかペンを握れなかった」
当時の手記で生々しく明かされたこの肉体崩壊は、昭和から平成にかけての少年誌における過密スケジュールが漫画家の肉体に課した代償そのものです。重度の腰痛と神経痛は、単なる休息で完治するレベルを超えており、日常生活の動作一つひとつに重大な支障をきたす深刻な状態が続いていました。
しかし、近年の冨樫氏は自らの身体的限界を受け入れたうえで、執筆スタイルを根本から再構築しました。専用の特殊な執筆台の導入、作画工程におけるデジタルツールの併用、そして「自身が担当する人物作画」と「スタッフに委ねる背景・モブ描写」の明確な境界線の引き直しです。かつてのように無理を押して椅子に座り続けるのではなく、身体への負荷を分散する作業ルーティンを確立したことこそが、現在の安定した原稿進捗を支える土台となっています。