もちろん、現代のブームは突如として現れたわけではない。日本には、大衆文学のなかで洗練されてきた豊かなエロティシズムの系譜が存在する。耽美と悦楽の極致を描き出し、人間の嗜好の深淵を覗かせた団鬼六。そして、医療や愛憎の現場から大人の男女の肉体と精神の結びつきを情熱的に描いた渡辺淳一。彼ら巨匠たちが築き上げた礎は、日本の文芸史において極めて大きな足跡を残している。
こうした巨匠たちの傑作を長年にわたり支え、世に送り出し続けてきたのが角川文庫や集英社といった老舗出版社だ。昭和から平成にかけて培われた文庫レーベルの信頼感と編集力は、現代のクリエイターたちにも脈々と受け継がれている。クラシックな名作群が持つ重厚な筆致は、デジタル世代の若い読者にとっても新鮮な驚きをもって受け入れられており、新旧の作品が同じ棚で魅力を競い合っている。