木綿豆腐であれ絹ごし豆腐であれ、プロが絶対に怠らない秘伝の下ごしらえがある。それが「塩茹で」という工程だ。沸騰したお湯に対して約1%の塩を加え、さいの目切りにした豆腐を2〜3分ほど静かに下茹でする。
この塩茹でには、調理科学上の明確なメリットが3つ存在する。第一に、浸透圧の作用によって豆腐内部の余分な水分が外へ排出され、身が適度に引き締まるため煮崩れが劇的に減る。第二に、豆腐の中心温度があらかじめ温まることで、後からタレに入れた際に鍋全体の温度を下げることなく素早く味が染み込む。そして第三に、適度な塩味が事前に下味としてつくことで、大豆本来の甘みが際立つのだ。
下茹でを終えた豆腐はザルに上げ、水気を切ってから手早く熱いタレの中へ投入する。弱火から中火でグツグツと優しく煮込むことで、豆腐の気泡の中に旨味がしっかりと閉じ込められ、噛んだ瞬間にジュワッと溢れ出す極上の仕上がりとなる。