地井武男の役者人生を語る上で欠かせないのが、脚本家・倉本聰との絆だ。名作『北の国から』で演じた中畑和夫(中畑木材の社長)は、黒板五郎一家をときに厳しく、ときに無償の愛で支え続ける北海道の温かい隣人だった。
倉本聰は地井さんの「泥臭さ」と「真っ直ぐな誠実さ」を誰よりも愛していた。セリフの間、泥にまみれた作業着の着こなし、ふとした仕草に至るまで、大地に根ざして生きる男を一切の作為なく体現した演技は、ドラマのリアリティを根底から支えた。フィクションの枠を超え、多くの視聴者に「あんな親父が自分の町にもいてくれたら」と思わせる力を持っていたのである。