小説家として巨匠の域に達しつつある現在も、彼はマイクを握ることをやめない。バンド活動や朗読パフォーマンス、あるいはイベントでのトークにおいて、町田康の身体表現と言語表現は常に地続きだ。
机に向かって文字を紡ぐ行為と、ライブハウスで汗を撒き散らしながら声を張り上げる行為。多くの表現者がこれらを別物として扱う中で、町田にとってはどちらも「世界の不条理に対する応答」に過ぎない。年を重ねるごとに増す声の深みと、研ぎ澄まされた文体のシャープさ。それらが交錯する瞬間、観客や読者は彼が最初から一貫して同じ衝動——すなわち「固定化された現実への反逆」——を抱き続けていることに気づかされる。