国際映画祭の常連である是枝裕和監督が今作で挑んだのは、これまで以上に泥くさく、人間の業(ごう)をありのままに描く壮大なストーリーだ。そして、その中心に立つのが、圧倒的な表現力で観客の心を掴んで離さない女優・有村架純である。彼女が演じる主人公は、従来の洗練されたパブリックイメージを完全に削ぎ落とした、土の匂いのする泥まみれの泥臭い人物像だ。
撮影現場からの目撃情報によると、二人の妥協なき議論は連日深夜まで及んだという。カメラが回っていない時間でも役に没入し続ける主演女優の凄気(すごみ)。監督が引き出す人間の生々しい表情と相まって、本作はこれまでにない重厚な空気感を纏っている。