大手百貨店の地下食料品売り場。色鮮やかな洋菓子や惣菜の店舗がひしめく中で、ひと際活気あふれる水産エリアが存在感を解き放っている。職人が客の好みに合わせて「今日一番良い部位」を選び、その場で刺身や焼き物用に三枚おろしにして手渡す。スーパーのパック売りとは一線を画すこの泥臭いまでの人間臭さこそが、長年人々を惹きつけてやまない魅力の源泉だ。
「今日は煮魚にしたいけれど、どれが良いかしら」「この金目鯛なら、少し濃いめの醤油で甘辛く炊くのが一番ですよ」。そんな会話が日常的に交わされる。ただ商品を並べるのではない。素材の持ち味を最大限に引き出す知恵を添えて届ける。デジタル全盛の時代にあって、この泥臭い対話こそが最強の差別化戦略として機能している。