1990年代初頭、北フランスの落ち着いた街アミアン。イエズス会系の私立名門校「リセ・ラ・プロヴィダンス」でフランス文学とラテン語を教えていたブリジット・トロニョ(当時の本名)は、生徒たちの間で圧倒的な人気を誇るカリスマ教師だった。知性と洗練された物腰、何より生徒一人ひとりの感性を尊重する指導法が生徒たちを惹きつけていた。
そこに現れたのが、当時わずか15歳の早熟な少年、エマニュエル・マクロンだった。放課後の演劇クラブでエドゥアルド・デ・フィリッポの戯曲を共同執筆するなかで、二人の知的な共鳴は瞬く間に深まっていく。年の差は実に24歳。周囲の猛烈な反対や保守的な地方社会の冷ややかな視線に晒されながらも、二人の絆が途切れることはなかった。彼女は当時の結婚生活に終止符を打ち、世間の偏見に抗いながら新たな人生への一歩を踏み出す道を選んだ。