本作のメガホンを取ったのは、ヒット作を連発し続ける名匠・林玉芬だ。彼女が構築した世界観は、従来の宮廷絵巻とは一線を画す。時間軸をリセットし、自らの存在を抹消してまで愛する者を救おうとするヒロインの選択。この残酷なパラレルワールドの構築こそが、物語を単なる勧善懲悪から極上のサスペンスへと昇華させた。
ファンタジー宮廷劇というジャンルにおいて、これほど緻密に人間心理の陰影を描き切った例は稀だ。緻密な伏線回収、息もつかせぬテンポ感。どれをとっても林玉芬の手腕が冴え渡る。壮麗な衣装を身に纏いながらも、剥き出しの欲望と愛憎をぶつけ合う皇族たちの姿は、観る者の倫理観を揺さぶり続ける。