「読まなければよかった」と後悔する読者がいる一方で、新刊が出るたびに書店へ走る熱狂的なファンが後を絶たない。このアンビバレントな現象の根底には何があるのか。それは、彼女の描く悪意が驚くほどリアルで、現代社会の病理を正確に射抜いているからに他ならない。
SNSでのマウンティング、タワマンカースト、家族間の無言の圧力、老いへの恐怖。私たちが普段は見ないふりをしている「日常の地獄」を、真梨幸子は一切の手加減なしに解剖してみせる。他人の不幸を覗き見たいという卑しい好奇心を刺激され、やがてその悪意の矢が自分自身に向けられていることに気づく。この痛烈なカウンターパンチこそが、イヤミスの真髄であり最高峰のカタルシスなのだ。