『ちいさい秋みつけた』や『リンゴの唄』で知られるサトウハチローは、佐藤愛子の異母兄にあたる。二人の関係は、世間がイメージする温和な詩人像とは程遠い、複雑で愛憎交錯するものだった。ハチローは幼少期から極度の悪童として知られ、父・紅緑との絶縁と和解を繰り返した逸話を持つ。
年下の異母妹である愛子に対し、ハチローが見せた顔は決して穏やかな兄ではなかった。しかし、二人の根底にあったのは、同じ血を分けた者同士にしか分からない共鳴と反発だ。破天荒な父に振り回された共通の記憶。日本文学の表舞台で共に才能を開花させながらも、決して分かり合えぬ距離を保ち続けた二人の確執は、一族の血の濃さを物語る象徴的なエピソードと言える。