大葉性肺炎の幕開けは、極めて劇的です。一般的な風邪のように「数日前から喉が痛く、徐々に熱が上がってきた」という経過をたどることはほとんどありません。健康に過ごしていた人が、ある瞬間からガタガタと全身が激しく震える悪寒戦慄(おかんせんりつ)に襲われ、一気に39〜40度前後の高熱に跳ね上がるケースが典型的です。
発熱とほぼ同時に激しい咳と胸の痛み(胸膜痛)が現れ、続いて見られるのが診断の大きな手がかりとなる「鉄錆色痰(てつさびいろたん)」です。この独特な赤褐色の痰は、肺の奥深くにある肺胞の毛細血管が急激な炎症で破綻し、滲出した赤血球が分解・酸化されることで生じます。通常の黄色や緑色の粘液性の痰とは明らかに異なり、錆びた鉄のような色を呈するため、患者本人や家族が異変に気づく最大のサインとなります。
また、呼吸をするたびに胸に突き刺すような痛みが生じるのも特徴です。これは炎症が肺の表面を覆う胸膜にまで及んでいる証拠であり、呼吸が浅く速くなることで、急速な息切れやチアノーゼ(唇や爪が紫色になる状態)へと進行していきます。