現実の世界でクラシックな裏社会ファッションが絶滅する一方で、デジタルエンターテインメントやサブカルチャーの世界では、その「失われた記号」が熱狂的に消費されている。セガの人気ゲームシリーズ『龍が如く』に登場する桐生一馬のワインレッドのシャツにグレーのスーツ、あるいは真島吾朗のパイソン柄ジャケットは、国内外のファンにとってクールなアイコンとして認知されている。
また、NetflixやU-NEXTといった動画配信プラットフォームでは、往年の名作任侠映画や裏社会を題材にしたドキュメンタリーが手軽に視聴できるようになり、Z世代や海外の視聴者が「かつてのギラギラしたアンダーグラウンド文化」をレトロな美学として再発見する現象が起きている。
危険な現実から切り離され、安全なスクリーンの向こう側で楽しむファンタジーとしてのヤクザファッション。現実の構成員が必死に隠そうとしている記号を、一般の若者やクリエイターがポップアイコンとして身にまとうという、奇妙なねじれ現象が定着している。