歴史をさらに遡れば、この地は江戸幕府を開いた徳川家康ゆかりの湯治場へと行き着く。家康は熱海の湯を極めて高く評価し、江戸城まで湯樽を運ばせた「御汲湯(おくみゆ)」の歴史は有名だ。港のすぐ背後に迫る山々から湧き出る豊かな温泉脈は、古くから多くの人々の心身を癒やしてきた。
現代の温泉旅行においても、港散策のあとに海を臨む露天風呂で汗を流すスタイルは至高の贅沢とされる。湯上がりに心地よい海風を感じながら港沿いを歩くひとときは、かつて天下人が堪能した贅を現代風に味わい尽くす体験そのものだ。海の恵みと湯の恵みが交差する独特の風土が、ここには確実に息づいている。