富山駅前で真に舌の肥えた大人たちを満足させている酒場には、明確な共通項が存在します。第一に挙げられるのは、富山湾の鮮魚・刺身の評判を支える圧倒的な仕入れ力です。富山湾は岸からわずか数キロで水深数百メートルまで落ち込む独特の藍瓶(あいがめ)地形を持ち、漁場から港までの距離が極めて近い特徴があります。この恩恵をダイレクトに客席へ届ける名店では、新湊漁港昼セリ直送の魚介が夕方の開店に合わせて厨房へと運び込まれます。
現地取材班が注目したのは、名物である白えびやホタルイカの扱い方です。冷凍技術が向上した現代においても、手剥き白えびのねっとりとした甘みと気品ある香り、そして春先に生で届くホタルイカの張り詰めた質感は、職人の目利きと仕込みの手間によって劇的な差が生まれます。駅前の老舗割烹酒場「だい人」や、地魚の刺身盛り合わせで圧倒的な支持を集める「親爺」、炭火焼きと魚介の調和を追求する「醸家」などの実力店では、刺身の一切ごとに包丁の角度や熟成度合いを変える緻密な仕事が施されています。
さらに、富山駅の居酒屋で海鮮のおすすめを探す旅行者が驚くのが、白身魚の層の厚さです。バイ貝のこりこりとした歯ごたえ、甘鯛(グジ)の昆布締め、のどぐろの脂の乗り、そして寒ブリの背と腹の食べ比べに至るまで、黒板に書かれた「本日の日替わり短冊」にこそ店の力量が凝縮されています。ネット上の画一的な情報に惑わされず、その日の水揚げに応じた柔軟な提案ができる板前がいるカウンター席こそ、富山の真髄を味わう特等席です。