日本映画監督協会の一員としても確固たる地位を築いてきた成瀬だが、映画における彼の挑戦は常に先鋭的だった。アジアの混沌と暗黒街の抗争をスタイリッシュに描き出した映画『不夜城 SLEEPLESS TOWN』では、緻密な構成力で原作の持つ熱量をスクリーンへ見事に昇華させた。
一方で、江戸川乱歩の耽美で狂気的な世界観を映像化したオムニバス映画『乱歩地獄』では、監督として自ら「火星の運河」を手掛け、観客を異様な映像体験へと引きずり込んだ。東映などの老舗映画会社と渡り合いながら、大手スタジオの商業主義に迎合することなく作家性を尖らせ続けた足跡は、今なお語り草となっている。