『アテナイの学堂』の完成度を決定づけているのが、計算し尽くされた一点透視遠近法(線遠近法)です。背景に広がる連続アーチの格子天井や床の敷石から伸びる直線を追っていくと、すべての線がプラトンとアリストテレスのちょうど中間、無限に広がる青空の1点(消失点)へと収束していることが分かります。
この構図設計により、鑑賞者の視線は自然と人類知の二大源流へと引き寄せられます。さらに背景にそびえる壮大なヴォールト建築は、当時ブラマンテが建設を進めていた新サン・ピエトロ大聖堂の構想を色濃く反映したものです。古代ローマの浴場や神殿のスケール感を現代に蘇らせることで、「ルネサンス=古代の再生」を視覚的に証明してみせました。
また、左右の壁龕(くぼみ)に配置された彫像にも明確な意味があります。左側には詩と理性を司るアポロン像(竪琴を持つ)、右側には知恵と戦いを司るアテナ像(槍と盾を持つ)が据えられており、画面全体の知的な調和を神聖な守護者として見守っています。