白石和彌監督の名を映画界に強烈に刻みつけた作品といえば、2013年公開の『凶悪』だ。実際の死刑囚が告発した殺人事件を基にしたこの作品は、日本映画界に衝撃を与えた。画面越しに伝わる冷酷なまでの狂気。単なる犯罪ドラマにとどまらず、人間の底なしの欲望を描き切った演出力は高く評価された。
撮影秘話として知られているのは、過酷なリアリティへのこだわりだ。主演の山田孝之やピエール瀧、リリー・フランキーが見せた怪演は、監督の徹底したディレクションから生まれた。実録バイオレンスというジャンルに新たな息吹を吹き込み、緊迫感あふれるクライムサスペンスの傑作として、今なお語り継がれている。