歌舞伎の舞台において屈指の華やかさを誇るのが「稲瀬川勢揃いの場(いなせがわせいぞろいのば)」です。捕手(とりて)に囲まれた五人の盗賊が、揃いの番傘と小袖をまとい、一人ずつ自らの素性を名乗り上げる「厄払い調(やくはらいちょう)」の渡り台詞は、舞台芸術の極致といえます。
稲瀬川勢揃いの場 セリフ 順番は、首領格である日本駄右衛門を筆頭に、五人が定まった順序で名乗りを上げます。ここでは、劇場で語り継がれる白浪五人男 セリフ 全文を登場順に整理して紹介します。
1. 日本駄右衛門(にっぽんだえもん)の名乗り
「問われて名乗るもおこがましいが、生まれは遠州(えんしゅう)浜松在(ざい)、志 inauguration(こころざし)もはや十五の時から、悪事に馴れて足手まとい、盗人の頭(かしら)となったのは、日本駄右衛門たぁ俺がことだ」
2. 弁天小僧菊之助(べんてんこぞう きくのすけ)の名乗り
「さてその次は江の島の、岩本院の稚児(ちご)あがり、普段着慣れし振袖から、島蔵(しまぞう)づくしの泥棒稼業、名せえゆかりの弁天小僧菊之助たぁ俺がことだ」
3. 忠信利平(ただのぶ りへい)の名乗り
「続いて後(うしろ)に控えしは、月の武蔵の秩父山、花も実もある盗賊の、仁義を通せし忠信利平たぁ俺がことだ」
4. 赤星十三郎(あかぼし じゅうざぶろう)の名乗り
「またその次に連なるは、以前は武家のお小姓上がり、主家の宝を盗み出し、あえなく身を持ち崩したる、赤星十三郎たぁ俺がことだ」
5. 南郷力丸(なんごう りきまる)の名乗り
「さてどん尻に控えしは、潮風荒き相州の、鎌倉育ちの生粋(きっすい)の、海千山千、荒波越えたる南郷力丸たぁ俺がことだ」
最後に五人が声を揃えて「白浪(志良浪)!」と見得(みえ)を切る幕切れは、観客の拍手と大向こう(おおむこう)の掛け声を誘う最大の見どころとなっています。