ニホンザルの社会といえば、厳格な縦社会と力による序列の支配が定説だった。しかし、ここ淡路島南部の柏原山系に暮らす約350頭の群れは、その常識を根底から覆し続けている。身体に障害を抱えた仲間や高齢のサルを決して見捨てず、群れの中枢で守り育てるのだ。
この現象に早くから着目したのが京都大学霊長類研究所をはじめとする研究チームだ。長期にわたる淡路島ニホンザル社会性調査プロジェクトを通じて、アルファオス(ボス猿)が率先して弱者にエサを譲り、他個体同士の小競り合いを平和的に仲裁する姿が記録されてきた。従来の霊長類学・野生動物保護の枠組みでは説明がつかない利他行動の数々は、第一線の動物行動学・野生観察ガイドたちの間でも「世界唯一の寛容なサル集団」として語り継がれている。