多くのネット利用者が陥る最大の誤解は、「不祥事を起こした側や公人に対してなら、何を言っても許される」という思い込みです。これは社会学でネットリンチ(私刑)と呼ばれる危険な状態に他なりません。
仮に対象者が法的な過ちや道義的な失態を犯したとしても、法治国家における制裁は司法手続きや正規の処分によってのみ下されるべきものです。個人の勤務先への電凸(電話攻撃)、家族の個人情報の暴露、自宅周辺の撮影や晒し行為は、正当な批判の範囲を完全に逸脱した私刑であり、明白な違法行為です。
現場取材で見えてくる盲点は、炎上の初期段階で拡散される情報の多くが「悪意ある切り抜き」や「事実無根の噂」である点です。SNSのアルゴリズムはユーザーの感情、とりわけ「怒り」を強く刺激する投稿を優先的に拡散する傾向があります。このため、文脈を無視して一部の発言だけを切り取った動画や画像が一人歩きし、真偽が確認されないまま数万人規模のバッシングへと発展してしまうのです。
「みんなが叩いているから事実だろう」という認知の歪みこそが、無自覚な一般人を加害者に仕立て上げる最大の罠といえます。