表舞台では照れ屋で寡黙な柄本明だが、角替さんとの関係は驚くほどフラットで、生涯にわたって恋人同士のようだった。下北沢の喫茶店で何時間も向かい合って他愛もない会話を交わし、毎日のように散歩を楽しむ。そんな二人の日常は、演劇界でも有名な「名物風景」だった。
「明は天才だから」と公言してはばからなかった角替さん。一方で柄本自身も、芝居に関する鋭い批評や人生の選択において、妻の直感を何よりも頼りにしていた。お互いの表現を批評し合いながらも、根本には絶対的な敬意がある。死別後、柄本がメディアで語った「ぽっかり穴が空いたよう」「彼女がいたから自分がいた」という飾らない言葉は、長年連れ添った夫婦の真実の重みを物語っている。