2026年現在、草薙の剣は2つの場所に存在しています。本体たる「御神体」は愛知県名古屋市の熱田神宮の奥深くに厳重に奉斎されており、天皇の身近に置かれる「形代」は皇居・御所の「剣璽(けんじ)の間」に安置されています。
即位の礼における「剣璽等承継の儀」などで用いられるのは皇居の形代ですが、その姿は幾重もの錦の袋と箱に包まれており、天皇陛下ご自身であっても直接その刃を目にすることはありません。熱田神宮の御神体に至っては、神職の最高位であっても開扉することは固く禁じられています。
誰一人として見ることが許されない完全な秘匿性こそが、神剣の不可侵の権威を守る砦となっています。「見れば命を落とす」という祟りの伝承は、神聖な領域へ人が踏み込むことを防ぐための強力な戒めとして、千年以上の長きにわたり機能し続けているのです。