この建造物を正面から見上げると、整然と並んだ赤レンガと白い石のコントラストが目に飛び込んでくる。設計を手がけたのは、陸軍省技師として数々の軍用建築を残した田村鎮(たむら まもる)だ。明治後期の洋風建築運動のなかで、彼が選択したスタイルこそが「ゴシック復興建築」の様式美だった。
中央部にそびえる八角形の塔屋、左右対称に配置された尖頭アーチ型の窓、そして屋根に配置されたスレート葺きの傾斜。過度な装飾を削ぎ落としながらも、軍の権威と気品を漂わせるデザインは目を見張るものがある。当時の大日本帝国陸軍が求めた質実剛健さと、西洋の伝統美が見事に融合した傑作と言えるだろう。
職人たちが手作業で積み上げた赤レンガの目地(めじ)を細かく観察すると、角を丸めた特殊な仕上げが施されていることに気づく。単なる軍施設を超えた造形への偏愛が、こうした細部にまで息づいているのだ。