作品の中で最も深い情動を呼ぶと目されているのが、妻であり、日本女子サッカー界の伝説的存在である澤穂希氏との密着パートだ。国民的ヒーローとしてあまりにも有名な澤氏だが、現役引退、そして家庭という新たなフィールドに立つ中で、夫婦がどのような対話を重ね、互いのキャリアと向き合ってきたのかは、これまで限られた情報しか明かされてこなかった。
「世界を制した妻と、組織を支える夫。ふたりの間には、一般的な夫婦像を超えた『挑戦者同士の静かな絆』が存在した」。ドキュメンタリーの編集を担当するスタッフは明かす。メディアの過熱取材から家族を守り抜き、同時に妻の偉大な功績を心からリスペクトし続けた辻上氏の葛藤。本作は、二人の飾らない肉声と言葉を丹念に拾い上げることで、最高峰のスポーツヒューマンドラマとしての深みをもたらしている。