宮崎県西諸県郡高原町に佇むトトロの像がこれほどまでに人々の心を打つ理由は、その圧倒的な造形クオリティと、制作背景にある心温まる家族のドラマにあります。制作したのは、地元で長年左官職人として腕を振るってきた佐藤政利さん夫妻です。
きっかけは、当時小さかったお孫さんたちが大好きなアニメ『となりのトトロ』を観て喜ぶ姿でした。「孫たちがあっと驚くようなプレゼントを贈りたい」「いつでもトトロに会える場所にしたい」という純粋な想いから、退職後の余暇を使って巨大オブジェの制作に着手。骨組みに木材や鉄筋を組み、発泡スチロールで肉付けした上から、長年培った左官の熟練技術を駆使してモルタル(セメント)を何層も丁寧に塗り重ねていきました。
報道各社の取材に対し、佐藤さん夫妻は「孫が喜んで抱きつく顔が見たかっただけ」と当時を振り返っています。丸みを帯びた愛らしいフォルム、毛並みの質感、優しい眼差しに至るまで、設計図なしで感覚と愛情だけで仕上げられた像は、完成と同時にお孫さんたちを大歓喜させました。その温かな情景が通りがかる近隣住民の目にとまり、口コミからSNSへと広がり、いまや日本全国からファンが訪れる奇跡のスポットとなったのです。