日ノ出町から伊勢佐木町へと続く一帯は、日本のカルチャー史にとっても特別な聖地である。日本映画界の巨匠・黒澤明監督による名作『天国と地獄』では、戦後の黄金町や日ノ出町周辺の熱気と陰影が見事に切り取られた。麻薬中毒者が彷徨う悲壮な路地裏の描写は、当時の都市のリアルな底流を強烈に物語っている。
一方で、この街は戦後の希望の光でもあった。横浜が生んだ昭和の歌姫・美空ひばりが幼少期に歌声を響かせ、初舞台を踏んだゆかりの地としても知られる。貧しさと混沌のなかで生まれた芸術やエンターテインメントの熱量は、今も路地裏の雑居ビルや老舗の劇場跡に静かに息づいている。