ハシビロコウの代名詞ともいえる「動かない生態」。これには過酷な野生環境を生き抜くための極めて合理的な理由が存在します。
彼らの主食は、泥の中に潜み肺呼吸を行う巨大魚「プロトプテルス(ハイギョ)」です。ハイギョが水面に息を吸いに浮上してくる瞬間は数時間に一度しか訪れません。その千載一遇のチャンスを逃さず、水面に波紋を立てて獲物に警戒されないよう、数十分から数時間ものあいだ石像のように静止して待つ狩りのスタイルが定着したのです。
また、ハシビロコウはほとんど鳴き声を上げない鳥としても有名です。代わりに大きなクチバシを激しく打ち鳴らして「カタカタカタ……」と機関銃のような音を響かせる「クラッタリング」という行動で仲間とのコミュニケーションを図ります。この音には威嚇だけでなく、親愛の情やお辞儀を交えた挨拶の意味合いも込められており、無表情に見える顔つきの裏にある豊かな感情表現に触れられる瞬間です。
大型のクチバシと鋭い眼光が際立つ体長は約120cm、翼を広げると2メートルを超えます。飼育下での寿命は30年〜40年以上と鳥類の中でも極めて長寿で、国内では過去に40年以上生きた長寿個体の記録も残されています。