根津甚八の原点は、1970年代の熱気渦巻くアングラ演劇の渦中にあった。演劇界の巨頭・唐十郎が率いる「状況劇場」に加入した彼は、紅テントの過酷な舞台で役者としての牙を研ぎ澄ませた。劇団の看板俳優として圧倒的な支持を集め、身体表現の極限を突き詰めたこの経験こそが、後の役者人生を支える強固な背骨となったのだ。
当時の舞台で培われた鋭利な感性と野性的な肉体言語は、やがて日本映画界のクリエイターたちの目にも留まることとなる。アングラ特有のアナーキーなエネルギーを内に秘めたまま商業映画の世界へと躍り出た彼は、従来の二枚目俳優にはない危険でミステリアスな魅力を放ち始めた。