戦後日本の建築界において、丹下健三らが牽引した機能主義的なモダニズムとは一線を画し、今井兼次が追求したのは「手仕事のぬくもり」と「精神の具現化」だった。現在、桃華楽堂は昭和モダニズムの特異な傑作として、国内外の建築史家から熱い注目を集めている。装飾を削ぎ落とすことが合理的とされた時代に、あえて装飾の極限を目指したこの建物は、日本の近代建築が持っていた豊かな多様性を証明する記念碑だ。
文化庁をはじめとする文化財保護の視点からも、戦後モダニズム建築の継承と保存は重要なテーマとして議論されている。皇室用財産という特殊な位置付けにあるため直接的な指定文化財の枠組みとは異なるものの、半世紀の風雨を経たタイルの剥落防止や補修技術の研究など、未来へ向けた維持管理の取り組みが宮内庁によって着実に進められている。