たてかべ和也は卓越した役者であったと同時に、声優業界の未来を見据えた高潔な指導者・経営者でもあった。彼はプロダクション「ケンプロダクション」の設立に深く関わり、後進の育成に心血を注いだ。
当時の声優業界は、まだ俳優の副業程度に捉えられることも少なくない過渡期にあった。たてかべは「声優という仕事の社会的地位を確立し、若い才能が安心して演技に没頭できる環境を作りたい」という強い信念を持ち、若手の面倒を徹底的に見たという。オーディションの受け方からマイク前での立ち振る舞い、果ては生き方そのものまで、温かくも厳しく指導した。
今日、ケンプロダクションが業界を代表する大手事務所としてトップ声優を次々と輩出している背景には、創設期にたてかべが撒いた情熱の種と、若手への深い愛情が存在する。彼が築いた土台は、日本声優界の今を支える太い骨幹となっているのだ。