イタリア料理における「ラグー」の輪郭を捉えるには、まずその言葉の成り立ちに目を向ける必要があります。煮込み料理のイタリア語定義において、ラグーは一種類の独立したソースではなく、素材の旨味をじっくり引き出す調理技法およびその料理群を包括するカテゴリー名です。
ラグーソースの意味と語源を遡ると、起源はフランス語の「ラグラ(ragoûter:食欲をそそる、食欲を刺激する)」にあります。中世から近世にかけてフランス宮廷料理の影響を受けた北イタリアの貴族階級が、細かく刻んだ肉と野菜を出汁でじっくり煮込む技法を取り入れ、イタリア語化したものが「ragù」の始まりとされています。
イタリアにおいてラグーとは、必ずしもひき肉のトマト煮込みだけを意味しません。牛肉や塊肉の煮込みを細かくほぐしたもの、野ウサギやイノシシなどのジビエ、さらにはタコや白身魚を使った魚介のラグー(ragù di pesce)まで、食材を細断して旨味を凝縮させた煮込み料理全般がラグーの名を冠します。つまり、「具材の出汁をソース全体に行き渡らせた煮込み」こそがラグーの本質なのです。