瀬戸内海へと注ぐ高梁川水系の西側、岡山県笠岡市に佇む井笠鉄道記念館。ここは、かつて笠岡と内陸部を結び、織物や農産物の輸送で栄えた井笠鉄道の旧新山駅舎をそのまま活用した施設だ。
木造の改札ラッチを抜けると、明治大正の面影を残す木造客車や「マッチ箱」の愛称で親しまれた蒸気機関車が静かに迎えてくれる。展示された切符切り鋏や手書きのダイヤグラムは、かつてここが地域経済の中心地であったことを無言で物語る。
保存状態の極めて良好なこれらの車両群は、単なる展示品を超え、地域共同体が近代化とどう向き合ってきたかを示す第一級の産業遺産として、学術的にも高い評価を受けている。