ミリオンセラーに迫る大ヒットを記録した1973年、金井克子はその年の掉尾を飾る第24回NHK紅白歌合戦のステージに立った。白組・紅組が火花を散らす国民的番組の舞台で彼女が見せたパフォーマンスは、日本の音楽業界の関係者を大いに唸らせた。
派手な衣装と扇情的な演出が横行する中で、彼女は研ぎ澄まされた黒のドレスに身を包み、スポットライトの中で静かに腕を交差させた。過度なカメラアピールを排し、ミニマリズムの極致とも言える洗練されたステージングを披露。視聴者を圧倒的な緊張感で包み込み、テレビ画面越しに凄まじいオーラを放った瞬間だった。
この紅白での成功は、単なる「流行歌の披露」にとどまらず、歌謡曲が舞台芸術や前衛アートと結びつき得ることを証明した。歌唱力と身体表現が完璧なバランスで調和したその姿は、後進の女性アーティストたちに計り知れない影響を与えるメルクマールとなったのである。