楽譜上で4分の4拍子を示す記号として、アルファベットの「C」のようなマークが使われます。英語圏で4分の4拍子をコモンタイム(Common Time)と呼ぶため、「Commonの頭文字『C』が由来である」と信じている学習者が少なくありません。しかし、これは音楽史における典型的な誤解です。
中世西洋の教会音楽(計量記譜法)において、キリスト教の「三位一体」を象徴する「3拍子」は最も完全なリズムとみなされ、完全な円(◯)で表記されていました。これに対し、4拍子(2拍子の派生)は「不完全な拍子」と位置づけられ、円の一部が欠けた「半円(⊂)」で表されたのです。この半円の形状が、活版印刷の普及に伴ってアルファベットの「C」と同一視されるようになり、今日まで定着しました。
なお、この半円記号の中央に縦線が入った「𝄵(カットタイム / アラ・ブレーヴェ)」は2分の2拍子を示します。記号の成り立ちを理解しておくと、中世・ルネサンスから現代に至る拍子概念の深層が鮮明に見えてきます。