綿引勝彦さんの妻である樫山文枝(かしやま ふみえ)さんは、日本の演劇界・テレビ史にその名を深く刻む名女優です。1941年8月13日生まれで、東京都出身(旧満州生まれ)。父は早稲田大学名誉教授を務めた著名な哲学者・樫山欽四郎氏という知的な家庭環境で育ちました。文化学院を卒業後の1964年、名門・劇団民藝に入団し、早くからその類まれな演技力と凛とした佇まいで頭角を現しました。
彼女の名を日本全国に轟かせた決定打が、1966年に放送されたNHK連続テレビ小説第6作『おはなはん』です。明るく前向きに激動の時代を生き抜くヒロイン・浅沼はな役を瑞々しく演じ切り、最高視聴率56.4%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)という驚異的な記録を樹立しました。「おはなはんブーム」は社会現象となり、樫山文枝さんは名実ともに国民的トップ女優としての地位を確立したのです。
一方の綿引勝彦さんは1945年11月23日生まれ。日本大学芸術学部を中退後、1965年に劇団民藝へ研究生として入団しました。年齢としては樫山さんが4歳年上であり、劇団のキャリアにおいても『おはなはん』で一躍時代の寵児となっていた樫山さんは、綿引さんにとって眩しい「偉大な先輩」という関係性から2人の歩みはスタートしました。