インターネット上の掲示板やSNSでは、法務局の手続きに関して根拠の薄い情報や過去の古い運用に基づく体験談が散見されます。現場取材によって浮き彫りになった代表的な誤解と、その実態を整理します。
誤解の筆頭は、「法務局の窓口に行けば、登記申請書の文面を職員が代わりに書いてくれる」という認識です。法務局は登記の審査を行う国家機関(行政庁)であり、個別の申請書類の作成代行や特定の権利関係に関する法的アドバイスを行う機関ではありません。窓口の「登記手続案内」で受けられるのは、あくまで『申請書の様式が合っているか』『添付すべき公的証明書の種別に不足がないか』といった形式面・手続き面の案内にとどまります。実質的な権利配分や紛争性のある遺産分割の合意形成について法務局職員が助言を与えることは法令上不可能です。
もう一つの深刻な誤解は、「法人の印鑑証明書は身分証明書さえあれば窓口で発行してもらえる」という思い込みです。個人の印鑑証明書はマイナンバーカードを用いてコンビニエンスストアや区役所で取得できますが、法人の印鑑証明書を法務局窓口で取得するには、法務局が発行した「印鑑カード」の現物提示が絶対条件となります。印鑑カードを持参せずに窓口へ訪れた場合、どれほど代表者本人が身分証を提示しても証明書は発行されません。こうした形式主義の原則を知らずに来庁し、手ぶらで引き返すことになるケースが頻発しています。
なお、名古屋法務局では愛知県司法書士会と連携し、定期的に「無料登記相談所」を開設しています。権利関係の整理や複雑な法的判断を要する場合は、行政窓口の案内枠に頼るのではなく、こうした専門職能団体の相談窓口や司法書士の個別面談を活用することが根本的な解決への近道となります。