実在する猫のスケッチから一歩踏み出し、「二足歩行する猫たちの王国」という奇想天外な世界観を構築したのが、東宝配給で大きな反響を呼んだ『猫の恩返し』だ。本作では、猫ならではのしなやかな身ごなしを保ちつつ、タキシードやシルクハットを完璧に着こなす男爵バロンをはじめ、個性豊かな面々が見事に描き出された。
生態系としてのリアルさを骨格に残しながら、どこまで人間に寄せるかという絶妙な塩梅。これこそがファンタジーアニメの領域における表現手法の真骨頂だ。現実とデフォルメの境界線を軽やかに飛び越える造形美は、その後のクリエイターたちへ多大な影響を与え続けている。