1988年から1989年にかけて起きた綾瀬女子高生監禁殺人事件は、日本の犯罪史上類を見ない残虐性と加害者たちが全員未成年であったという事実から、国民に強烈なトラウマを植え付けた。事件の全貌が明るみに出るにつれ、活字メディアだけでなく漫画界にもその衝撃は波及していく。
1990年代から2000年代にかけて、アンダーグラウンドな空気感を漂わせる実話系クライムサスペンスが青年誌や実話誌で急増した。実話をベースにしたコミカライズは、読者に現実の恐ろしさを突きつける圧倒的なリアリティを持つ反面、過激な暴力描写や性暴行の再現がセンセーショナリズムとして消費される危うさを常に孕んでいた。
事件そのものをストレートに模倣したアングラ作品から、人間の心の闇や集団心理の狂気を描く社会派作品まで、作家や編集者がどのような視点で事件を切り取ったかによって作品の評価は真っ二つに分かれた。