特殊清掃の現場取材や従事者の手記によると、死後一週間が経過した部屋の扉を開けた瞬間に広がる光景は、一般人の想像を絶する過酷さがあります。畳やフローリングの上で倒れていた場合、遺体から滲み出た数十リットルに及ぶ体液や血液、脂肪分が床板を通り抜け、床下の根太(ねだ)やコンクリートスラブにまで到達しています。さらに、死後数時間で卵を産み付けるクロバエの幼虫(ウジ)が一週間で何万匹と孵化し、蛹から成虫へと羽化して窓際を埋め尽くすのが特殊清掃における現場のリアルです。
このような状況で発見されたご遺体は、法律上「変死体」として扱われます。病院以外の場所で医師の立ち会いなく死亡した場合、事件性の有無を確認するために警察への通報が義務付けられており、所轄警察署の鑑識係や刑事課による検視・現場検証の警察手続きが開始されます。発見から数時間は現場が立ち入り禁止となり、遺族であっても室内に入ることは許されません。
警察による検視や死体見分、必要に応じた行政解剖・司法解剖が行われる間、ご遺体は警察署の霊安室に安置されます。しかし、警察署の設備は一般的な冷蔵保管庫(2〜4℃)とは異なり、長期保管を前提としていないケースもあります。そのため、死後一週間が経過したご遺体は引き渡しまでの間にも組織の崩壊が進みやすく、ご遺体の保冷と安置期間の限界を迎えることになります。警察から遺族への引き渡し時には「対面は控えたほうがよい」「お棺の小窓を開けないでください」と担当刑事から強く念押しされるのが通例です。