オミクロン株が持つ最大の武器は、恐るべきスピードで繰り返される抗原変異だ。呼吸器粘膜に作られるIgA抗体の寿命は数カ月と極めて短く、血中のIgG抗体が高水準であっても、ウイルスが鼻腔や咽頭に侵入する最初のステップを完全には阻止できない。獲得免疫がウイルスの侵入を記憶していても、相手はすでに別人のような装いで現れる。
ウイルスの表面に無数に突き出たスパイクタンパク質のアミノ酸変異は、過去の抗体が結合する「鍵穴」の形状を劇的に作り変えた。これにより、以前の系統に感染して獲得した中和抗体の効力は激減する。感染後わずか60日から90日程度で再びウイルスを体内に迎え入れてしまう現象は、個人の体質や免疫不全による例外ではなく、ウイルスの進化速度が人体の適応速度を追い越している構造的な現実を示している。